読書の日記

読書の備忘録です。いろんな本を読みます。ぼちぼちやるので見ていってください。

15.だから荒野 桐野夏生

最初の印象は、うわっなにこれ。読みたくないな。だった。しかし結局2日で読んでしまった。

 

 

まず、冒頭50ページ程で家族崩壊というものがまざまざと見せつけられた。みんな自分勝手で、この家族の男たちは見てるものを不快にするなあという印象を持った。しかし、母の方にも決して悪いことがないわけではなく、自分の家は家族仲が良い方なのでわからないが、ここまでとはいかなくともその辺にあるかもしれない家庭の状況なのかなと思う。

 

話は進み父目線と母目線で話は進んでいく。父パートでは父方の自分勝手さ、周りはひいているのに気づかなく自己正当化するところが様々な場面から伺える。母が消えたことによる『家庭の崩壊』を感じることができないまま家庭は崩壊する。崩壊するまで自分は合ってる、お前らは社会に通用しないを唱え続けた父は最後まで変わらないでいるものの、円満に終わるのかな、といった感じで進む。

 

母パートではお金遣いが荒く、この人本当に逃げ続けられるのかな、と若干呆れる。拾い拾われの定まらない状況変化、ドライブ中に会う人たちはそれぞれが細かく書かれていて面白かった。ただ途中から母は合理的だったという評価を息子たちからされていたことにはびっくり。野菜食べないから野菜ジュースにするって合理的なのか?と思う。猛々しさも、最初見た限りでは全く感じなかったけれど、確かに1人でとりあえず長崎に行くという決断は猛々しいのかとなんとか飲み込んだ。

 

最後には家に戻ってくるとなって、解決したかに見えるが息子への不安は拭いきれない。父もまた然り。だから荒野、とは行く先のない先行きのわからないところへ旅するから荒野だと思っていたが、自分の住んでいる環境全てを指して荒野、と言っているのはなるほど!といった感じにすっきりとした。

 

最後に、これはレッテル貼りの好きな現代への風刺みたいなものなのかなとも感じる。父の話が止まらないのも自分でそう思っているからこそ、喋らなくてはという感じだったし、いざという時は言葉を失ったりとブレブレだった。また母の合理的、猛々しさというのは言われないとあー、なるほどとはならない(これは自分だけかもしれないが)。また次男も決めつけられていたが新たな一面を垣間見ることによって、母の決意は揺らぐ。レッテルを貼ることによりできなくなること(次男への諦め)人の不確かさ、時間、環境からの影響など人のリアルも書けていると感じた。

 

2.〜14. ひとくち感想

生きてるうちにさよならを 吉村達也

短いのですぐ読める。またオチを含めて満足できる内容。誰かに宛てた形式で書かれている本を読んだのは初めてだったが、読みやすい。

 

凍りのくじら 辻村深月

スリードかと思った部分は最後にはなるほど!!読後感は爽やか。初辻村深月の本としてはまた読みたいと思えるものだった。

 

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ 辻村深月

田舎の男女ってこんな感じなのか〜という感じ。上京してきた人が見るともっと入り込めたのかもしれない。お母さんは偉大。

 

ふがいない僕は空を見た 窪美澄

1人1人が救われなく、ちょっともやもや。ヒロイン!?おばさんだけどの夫家族がすごいやだ。

 

神様ゲーム 麻耶雄嵩

最後が意味わからん。なんとか大賞とってただけに残念。中学生向けかと思ったら父ちゃんがヘビーな性癖。どの世代を対象にしたのだろう。

 

愚行録  貫井徳郎

一般的に見ると幸せそうな家庭。どんどん話が進むにつれて、この奥さんおかしくないか?と本に読まされていく。記者の人との会話形式で話が進んでいき、びっくりのラスト。面白かった。

 

ヒア・カムズ・ザ・サン 有川浩

同じ設定で全然違う話が書ける。ifよりも正規ルートの話の方が好き。少ない情報で話を膨らませていく。小説家って凄い!となる作品。キングダムの作者も王騎の書かれているのが一文だったにもかかわらずあれだけ話を膨らませてる!凄い!

 

すぐ感情的になる人  片田珠美

自分が軽度の?ADHDではないかと疑った。怒ることは必要だけど、爆発はダメだね。まあ多くの人に少しは当てはまるようなことが書かれてた。

 

十字架 重松清

小中高生の教科書にも載るだけあって、やはりその年代の心理描写とかが抜群。卓越。話は重いし、大人になるまでが書かれているからどの代にもおすすめ。

 

夜のピクニック 恩田陸

途中で仲直りするんだろうなあと思って進むけれど、話の進み方が最後まで飽きさせなかった。すっきりする。

 

午前0時の忘れ物 赤川次郎

ミステリーのイメージがあった(これ以外読んだことないけれど)のに、ほっこりしそうな裏表紙だったので購入。読んでみてほっこり。ただ同名の子はかわいそうだった。

 

命売ります  三島由紀夫

初めて読んだ三島由紀夫。命を軽く見たプレイボーイが結局命を惜しむ話。途中から冒険してるところはなんかなあ、と思った。命を売っていく様は厭世観が漂ってて初めましての感じだった。

 

人間失格 太宰治

彼の自伝としての面もある人間失格。才能がある人が酒と女に溺れていく様。人を一番恐ろしいものとして見れないけれど、なんとなくわかるなあと思うところもあったり。周りに対しての感受性が豊かすぎたのかな。

 

ひとくち感想は結構内容うろ覚えです。

ちょこちょこひとくち感想を消化しながら、今読んでいる本も更新していきます!

 

 

1.マリアビートル 伊坂幸太郎



繋がりのあるとされるグラスホッパーを読んでからのマリアビートル、面白かった。すっきりする終わり方ではあったけれど、蜜柑と檸檬は好きだったので殺してほしくなかった。


運の悪い七尾、運のいい王子、

実はお互いに知ろうとしていた蜜柑と檸檬、

アル中木村と伝説の殺し屋木村

前作グラスホッパーの鈴木、あさがお(漢字出ず)と雀蜂


彼らの視点から繰り出される物語は微妙に疑問を残し、また快活なセリフ、軽快なテンポで「巻を措く能わず」状態にならざるを得なかった。


また、伊坂特有ともいえる、その時々の社会問題に対しての投げかけ、登場人物の解釈という形で提示しているものも、私の使っている、中学生のテキストの中の論説文にあり、自身も考えさせられるものとなった。


今回はなぜ人を殺してはいけないのか?という問いに対し大江健三郎がテレビの討論番組でそんな問いを持つのは人の尊厳がないからだ、みたいなことを言った(正確には覚えていない)ものだった。

本作では王子が関わりを持った大人たちに聞いていく。しかしその答えは彼を満足させるものではなかった。しかし鈴木が示したものは納得のいくものだった。

とてもざっくり言うと、

取り返しのつかないものを壊す、という意味では他のものでも言える

人は自分の安全が保障されていないと経済活動がままならない

ということだった。拙い説明で申し訳ないが、詳しくは本書で。


蜜柑と檸檬について死んでほしくなかった、と上で言ったが彼らも殺し屋である。人を殺してきたからそいつも殺されて当然、という訳ではないが2人ともあっけなく死んでしまった。これは彼らがどれだけ魅力的であろうと、そこら変にいるハッピーエンドを迎える善人ではないことが強調されているように思う。最後の救いとして七尾が蜜柑と檸檬をくじ引きで当てるが、その程度である。


陽気なギャングシリーズもそうだが、彼らがやっていることは、確実に悪いことであるのにコミカルに描き、彼らに惹きつけられるのは彼らに人間味が備わっているからではないだろうか。その話は、また次回。