読書の日記

読書の備忘録です。いろんな本を読みます。ぼちぼちやるので見ていってください。

76.アイネクライネナハトムジーク 伊坂幸太郎

76.アイネクライネナハトムジーク 伊坂幸太郎

 

読書が滞っていたので、新作のAXを買おうかな〜と思っていたところに文庫版のアイネクライネナハトムジークを発見。購入を決めてそのままカフェでほとんど読んでしまった。

 

短編集だったが、一編一編楽しい気持ちで読める。会話だけで、気の利いた一言だけで楽しい気持ちにすることができるのは私の読んだ本の中では群を抜いて伊坂幸太郎がすごい。

斉藤和義さんの楽曲とのコラボだったらしく、作中で出る歌詞のフレーズを探してみたいなと思えるくらい、伊坂作品の中に溶けている。

 

伊坂作品をネットのレビューとかで見ると、結構相関図が多い。伏線や、短編集の中の人たちが繋がることの多い作品だからか、とてもよく見る。もちろん、きっちりかっちりこことあれが繋がってる、ここのシーンはあのシーンと繋がってるのかとかわかったほうがいい。けれど伊坂作品はやんわり、あ、繋がってたな、とか本を読み終えてぼーっとしてる時にあー、あれそういうことか、となるだけで十分に満ち足りる。きっちりかっちりもいいかもしれないが、少々野暮な気もする。そんな肩肘張りながら、見ないでよ。みたいな。大事な部分を見逃してしまうかもしれない。読み進めている時も同様に、ひとつひとつリセットするくらいの気持ちで読んでみても十二分に楽しめる作品であると保証できる。

 

多くの人は自分の人生に劇的で、より刺激を求めていると思う。また、ある刺激的な状態が一定以上維持されるとさらなる刺激を求めてしまうと思う。「足るを知る」を実践、身体に精神に浸透させている人はほとんどいないと思う。

 

少し話が逸れたが、本書は人の営みの中の小さな偶然の集合体を見せてくれる。全編通して人と人は繋がり、どこかで繋がり、その中で幸せに生きているんだ、という姿を見せてくれる。

 

私は、例えば、自分の夢を志すきっかけはなんだっただろうかと考える。それは一言では確実に表せない。なぜなら小さなきっかけが連なって、夢ができたからだった。もちろん、ある医者に救われた、だから自分は医者になりたい、と夢を志し、医者になった人もいるだろう。しかしその人もまた、医者を目指すうえで、医者という職業になるのがどれほど困難であるかを知り、挫折に近い経験の中、でも医者になりたいと願い行動に移した結果、なれたわけだろう。大きなきっかけを小さなきっかけがつなぎ合わさって今になる。

 

人生は必ずしも劇的ではないが、とても小さなきっかけや繋がりが人を幸せにしていることを斉藤和義の歌の一部とともに教えてくれる本でした。