読書の日記

読書の備忘録です。いろんな本を読みます。ぼちぼちやるので見ていってください。

21.ストーリー・セラー 22.バイバイ、ブラックバード

21.ストーリー・セラー 有川浩

sideA 小説内の小説家が書いた小説の中の小説家が書いた小説に惚れた男の話。

sideB 小説内の小説家が前作を受けて対に

なる物語を現実の逆夢にしてしまうために書いた小説。

 

sideAを見たとき、主人公の犯罪者感くっさい台詞にびっくりした。安っぽいドラマ(見たことないけれど)を見ているようだった。またsideAのヒロインの家族や周りの人がどうしようもなさすぎて(特に父)流石にこんなやつおらんやろ、と思ってあまり物語にのめり込めなかった。小説だったことも、ん?この半分なんだったん?と思ってしまった。

sideBは割と好きだった。小説家とその小説家の本が好きな彼氏という構図が変わらずに死に至るのは逆、というのは面白いと思った。最後の終わり方も良かった(多分まだ生きている?)。でも彼女、小説で書いたsideBのような出会いをし、彼氏と結婚している。sideAと同じような出会いと言ってもいい。ということは救われないのではないか、と思った。

 

この作品、見開き1ページ全部好きだ、とか覆す、とかの単語で埋まっていることがあってあまり好みではない。怨念系。

 

 

 

22.バイバイ・ブラックバード 伊坂幸太郎

 

ショートストーリーなのだが、6編全てが彼が女性と別れる、別れようとする話で、そんなに色々差をつけて書けるのかなと思った。

 

全くの杞憂だった。

イチゴ狩りで出会った女性

刑事に車を持ってかれたときに、出会った女性

怪盗になりたい女性

乳がんかもしれない女性

女優

繭美

彼女たちとはそれぞれに確固たるストーリーがあった。

イチゴ狩りで出会った女性の話に出てきた、大盛りラーメンを食べられなければ別れる、というもの、話の軽快さもあり没入してしまった。特にイケメンという訳でもない主人公、明らかに現実離れした肉体の繭美、そしてどこにでもいそうな彼女。この話から始まったから、普通の女の子から始まったから、するする読めたのかもしれない。

繭美はどんどん変わっていき、最終的には主人公を助けようとする。提案をする。彼の不思議な魅力に惹きつけられた女性のうちの1人だということだろうか。

 

ロングインタビューを見てみたら太宰治の未完のグッド・バイのオマージュだとあった。また笑いの根底には死があるというは伊坂作品共通して言えることではないかと感じた。

19.学問の技法 20.去年の冬、きみと別れ

19.学問の技法 橋本努

とある先生に勧められて、本日読了。一言で言うと、大学生活何をしていいかわからずモヤモヤしている大学生はこれを読もう!だ。

 

まだ何もしていない学生達にわかるように、学問と勉強の違い、読書のすすめについて書いてある。著者が大学教授であるからか、レポートや卒論、ディスカッションなどについても書いてある。様々な人と触れる機会の多くなる学生にはどの章でもいいのでみたいなと思ったところだけでも見てもらいたい。

 

借り物だけに、付箋など貼れないのが大変惜しい。Amazonで注文することを決めた。自分が何かに躓いたとき、何をしたらいいかわからないとき、そんなときにこの本を読み返したい。

 

 

20.去年の冬、きみと別れ 中村文則

 

著者の作品は「教団X」が有名であるが、背表紙を見たときびびっときたので、即購入した。

 

 ページ数も180ページちょっとと短く読みなれている人は3時間くらいで読み終えられてしまう分量だったので一気読みをしてしまった。

 

最初は小説家、僕と雪絵が別れることを仄めかす場面もあり、それが題名なのかと思っていた。いい意味で裏切られた。帯には、この事件は根底から2度覆る。とあった。K2の人形師の推測やその人形たちに、朱里さんに、騙された。最後はん??と思ったが仮名なのだから木原坂という名前は仮名だし、僕も名前が出ていないので、その彼らの本名があのイニシャル、という解釈で間違っていないだろうか。もう一度読んでみようと思える作品だった。

 

ミステリーはあまり読まずにいたので、これからどんどん有名どころの東野圭吾など読んでいこうと思う。

 

16.〜18陽気なギャングシリーズ 伊坂幸太郎

16.陽気なギャングは地球を回す

17.陽気なギャングの日常と襲撃

18.陽気なギャングは三つ数えろ

 

最初の作品を見たのは中学生だった。私の感性があの頃と変わらないのは、中身が成長していないからか、伊坂幸太郎の書くものは年代問わずうけるのか、どちらかだ。後者でありたい。

 

久遠、響野、成瀬、雪子彼らの相変わらずの軽快な会話、知的好奇心をくすぐる会話、伏線回収のための会話。その全てがページをめくるための『会話』になっている。どんどんどんどんページをめくってしまうこの独特のストーリーの進み方は伊坂幸太郎だけのものだろうと思う。

 

日常と襲撃での人気演出家の奥谷奥谷は首折り男のための協奏曲の合コンの話にちょろっとでていたり、普段から悪いことしているやつはたまにいいことしたくなるんだ、とかの台詞回しは他の作品に出てくる。ネタがないから、などとも言われそうだが、それぞれ個人がすらっと言う。違和感はない。人もいろんな作品の親戚だったり、とか言われているがそこまでは気にして見ていない。

 

マリアビートルでも書いたが、彼らは犯罪者である。決して善良な市民が人助けをするお話ではない。陽気なギャングは三つ数えろでも悪い記者をやっつけるために違法カジノのディーラーのおばあちゃんの形見の亀を殺したかのようにするし、悪い記者のその後はわからない。しかし、読んですっきりなのはなぜだろう。彼らは銀行強盗だ。本書の言葉を引用するなら気を隠すなら森の中。失敗を隠すなら大失敗の中。悪党を隠すならより巨大な悪党。といったところか。笑

三作目にして彼らは強盗稼業の引退をほのめかしているが、頑張ってほしい。時が経っても変わらずに軽妙な会話をしてほしい。

 

次回?というか9月から読んだ本がまだ書いていないのが10作品くらいあって、最近は本読むペースも早くなってきて、溜まる一方なので思い入れのある伊坂作品達もどんどん書いていきます。

 

 

 

15.だから荒野 桐野夏生

最初の印象は、うわっなにこれ。読みたくないな。だった。しかし結局2日で読んでしまった。

 

 

まず、冒頭50ページ程で家族崩壊というものがまざまざと見せつけられた。みんな自分勝手で、この家族の男たちは見てるものを不快にするなあという印象を持った。しかし、母の方にも決して悪いことがないわけではなく、自分の家は家族仲が良い方なのでわからないが、ここまでとはいかなくともその辺にあるかもしれない家庭の状況なのかなと思う。

 

話は進み父目線と母目線で話は進んでいく。父パートでは父方の自分勝手さ、周りはひいているのに気づかなく自己正当化するところが様々な場面から伺える。母が消えたことによる『家庭の崩壊』を感じることができないまま家庭は崩壊する。崩壊するまで自分は合ってる、お前らは社会に通用しないを唱え続けた父は最後まで変わらないでいるものの、円満に終わるのかな、といった感じで進む。

 

母パートではお金遣いが荒く、この人本当に逃げ続けられるのかな、と若干呆れる。拾い拾われの定まらない状況変化、ドライブ中に会う人たちはそれぞれが細かく書かれていて面白かった。ただ途中から母は合理的だったという評価を息子たちからされていたことにはびっくり。野菜食べないから野菜ジュースにするって合理的なのか?と思う。猛々しさも、最初見た限りでは全く感じなかったけれど、確かに1人でとりあえず長崎に行くという決断は猛々しいのかとなんとか飲み込んだ。

 

最後には家に戻ってくるとなって、解決したかに見えるが息子への不安は拭いきれない。父もまた然り。だから荒野、とは行く先のない先行きのわからないところへ旅するから荒野だと思っていたが、自分の住んでいる環境全てを指して荒野、と言っているのはなるほど!といった感じにすっきりとした。

 

最後に、これはレッテル貼りの好きな現代への風刺みたいなものなのかなとも感じる。父の話が止まらないのも自分でそう思っているからこそ、喋らなくてはという感じだったし、いざという時は言葉を失ったりとブレブレだった。また母の合理的、猛々しさというのは言われないとあー、なるほどとはならない(これは自分だけかもしれないが)。また次男も決めつけられていたが新たな一面を垣間見ることによって、母の決意は揺らぐ。レッテルを貼ることによりできなくなること(次男への諦め)人の不確かさ、時間、環境からの影響など人のリアルも書けていると感じた。

 

2.〜14. ひとくち感想

生きてるうちにさよならを 吉村達也

短いのですぐ読める。またオチを含めて満足できる内容。誰かに宛てた形式で書かれている本を読んだのは初めてだったが、読みやすい。

 

凍りのくじら 辻村深月

スリードかと思った部分は最後にはなるほど!!読後感は爽やか。初辻村深月の本としてはまた読みたいと思えるものだった。

 

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ 辻村深月

田舎の男女ってこんな感じなのか〜という感じ。上京してきた人が見るともっと入り込めたのかもしれない。お母さんは偉大。

 

ふがいない僕は空を見た 窪美澄

1人1人が救われなく、ちょっともやもや。ヒロイン!?おばさんだけどの夫家族がすごいやだ。

 

神様ゲーム 麻耶雄嵩

最後が意味わからん。なんとか大賞とってただけに残念。中学生向けかと思ったら父ちゃんがヘビーな性癖。どの世代を対象にしたのだろう。

 

愚行録  貫井徳郎

一般的に見ると幸せそうな家庭。どんどん話が進むにつれて、この奥さんおかしくないか?と本に読まされていく。記者の人との会話形式で話が進んでいき、びっくりのラスト。面白かった。

 

ヒア・カムズ・ザ・サン 有川浩

同じ設定で全然違う話が書ける。ifよりも正規ルートの話の方が好き。少ない情報で話を膨らませていく。小説家って凄い!となる作品。キングダムの作者も王騎の書かれているのが一文だったにもかかわらずあれだけ話を膨らませてる!凄い!

 

すぐ感情的になる人  片田珠美

自分が軽度の?ADHDではないかと疑った。怒ることは必要だけど、爆発はダメだね。まあ多くの人に少しは当てはまるようなことが書かれてた。

 

十字架 重松清

小中高生の教科書にも載るだけあって、やはりその年代の心理描写とかが抜群。卓越。話は重いし、大人になるまでが書かれているからどの代にもおすすめ。

 

夜のピクニック 恩田陸

途中で仲直りするんだろうなあと思って進むけれど、話の進み方が最後まで飽きさせなかった。すっきりする。

 

午前0時の忘れ物 赤川次郎

ミステリーのイメージがあった(これ以外読んだことないけれど)のに、ほっこりしそうな裏表紙だったので購入。読んでみてほっこり。ただ同名の子はかわいそうだった。

 

命売ります  三島由紀夫

初めて読んだ三島由紀夫。命を軽く見たプレイボーイが結局命を惜しむ話。途中から冒険してるところはなんかなあ、と思った。命を売っていく様は厭世観が漂ってて初めましての感じだった。

 

人間失格 太宰治

彼の自伝としての面もある人間失格。才能がある人が酒と女に溺れていく様。人を一番恐ろしいものとして見れないけれど、なんとなくわかるなあと思うところもあったり。周りに対しての感受性が豊かすぎたのかな。

 

ひとくち感想は結構内容うろ覚えです。

ちょこちょこひとくち感想を消化しながら、今読んでいる本も更新していきます!

 

 

1.マリアビートル 伊坂幸太郎



繋がりのあるとされるグラスホッパーを読んでからのマリアビートル、面白かった。すっきりする終わり方ではあったけれど、蜜柑と檸檬は好きだったので殺してほしくなかった。


運の悪い七尾、運のいい王子、

実はお互いに知ろうとしていた蜜柑と檸檬、

アル中木村と伝説の殺し屋木村

前作グラスホッパーの鈴木、あさがお(漢字出ず)と雀蜂


彼らの視点から繰り出される物語は微妙に疑問を残し、また快活なセリフ、軽快なテンポで「巻を措く能わず」状態にならざるを得なかった。


また、伊坂特有ともいえる、その時々の社会問題に対しての投げかけ、登場人物の解釈という形で提示しているものも、私の使っている、中学生のテキストの中の論説文にあり、自身も考えさせられるものとなった。


今回はなぜ人を殺してはいけないのか?という問いに対し大江健三郎がテレビの討論番組でそんな問いを持つのは人の尊厳がないからだ、みたいなことを言った(正確には覚えていない)ものだった。

本作では王子が関わりを持った大人たちに聞いていく。しかしその答えは彼を満足させるものではなかった。しかし鈴木が示したものは納得のいくものだった。

とてもざっくり言うと、

取り返しのつかないものを壊す、という意味では他のものでも言える

人は自分の安全が保障されていないと経済活動がままならない

ということだった。拙い説明で申し訳ないが、詳しくは本書で。


蜜柑と檸檬について死んでほしくなかった、と上で言ったが彼らも殺し屋である。人を殺してきたからそいつも殺されて当然、という訳ではないが2人ともあっけなく死んでしまった。これは彼らがどれだけ魅力的であろうと、そこら変にいるハッピーエンドを迎える善人ではないことが強調されているように思う。最後の救いとして七尾が蜜柑と檸檬をくじ引きで当てるが、その程度である。


陽気なギャングシリーズもそうだが、彼らがやっていることは、確実に悪いことであるのにコミカルに描き、彼らに惹きつけられるのは彼らに人間味が備わっているからではないだろうか。その話は、また次回。