読書の日記

読書の備忘録です。いろんな本を読みます。ぼちぼちやるので見ていってください。

62.もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 岩崎夏海

62.もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら  岩崎夏海

 

 

本書はマーケティングを知らない、私たちと同じ土俵から始まる。まずみなみは売り手(買い手でもあるが)、働く人つまり部員の競争、結果、責任を促すことによって組織改善をした。それは言葉にすれば簡単であるが個人の想いを一人一人に聞くのはとても骨の折れることであったと思う。また、そこから練習内容の改変や土台となる目標を据え組織を活発にさせた。5章では世間、買い手にあたる学校に貢献できないかを考え他の部活の活性を促した。また、素行不良の生徒に目を向けやりがいを学校という社会に見出させようとした。それは組織活性に必要不可欠であったし、社会の問題解決にもつながった。ここれらの成功はみなみがマネジメントを読み、真摯さについて感銘を覚えたことが成功要因になったと考えられる。また真摯に人に向き合うことが野球部に関わる人たちが意識を改善するに至った要因なのだと感じた。

 

次にイノベーションについて。イノベーションは古いもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることと書いてあった。行ったイノベーションは大きく分けて二つだ。一つ目は野球のある種凝り固まった考え、だった。こちらは野球のことを詳しく知らないのでどれほど革新的なことなのかわからない。しかし古いものを捨てることによってより明確な目標が出来、練習内容の充足につながった。そして二つ目は正義の提案した他の部との合同練習だ。教えることは自分がただわかっている状態よりもさらに深い理解が必要になる。

 

6章のイノベーションに取り組んだではとても興味深い記述があった。P183のマネジメントの引用部分だ。あらゆる組織が事なかれ主義の誘惑にさらされる、弱みがないことを評価してはならない、とあり現在の日本の報道を見ると失敗を叩きつくすという印象を受ける。これは自身を、組織を矮小にするものではないだろうか、その報道は見ている人の自尊心を膨らますことはあれど良い方に転じることはないのではないかと感じる。そしてそれらを見てきた人は失敗ばかりを恐れるマネジメントで書かれている下らない人間、を量産するのではないか。もちろん、失言や不正はしてはいけない。しかし報道とは世間に知らせる良い方法であるのになぜ成功体験を知らせるといったことはほとんど報道されないことを疑問に思う。日本という社会全てに良い結果をもたらすかもしれないものであるのであれば報道はしたほうがいいに決まっている。相互に良い影響を及ぼすことが良いサイクルを生むと理解はしたが現状日本はできてないことが多いのではないかと思う。

残りの三ヶ月となって、怒濤の練習、矢の如く過ぎ去る日々、そして優勝までのサクセスストーリーと思っていたら夕妃が亡くなるなんて、思わなかった。その後のみなみの立ち直りの早さにびっくりした。お話の面でもマネジメントを学ぶきっかけという面でも役に立つ本だと思う。

温故知新、これがマーケティングイノベーションを起こすのに必要な要素であると感じたのでより多くの人にこの本を読んでもらいたいと思った。