54.ぼくのメジャースプーン 55.サブマリン
54.ぼくのメジャースプーン 辻村深月
凍りのくじらが面白かったから、2作目。
小学生の話し口調で話は進む。小学生らしからぬ言葉遣いや難しい漢字を平仮名にすることで小学生っぽさを出してるんだけど、ちょっと違和感があった。その小学生の思っていることをしっかりと言語化したらこういう感じになる、ていうのを文章にしてるのかなと解釈して、慣れた。
内容的にも、うさぎを惨殺されて心を閉ざしてしまう女の子もまあ小学生でないと話が綺麗に流れないだろうし、伝えたい部分はそこではないから些末なことなのかなと。
女の子を救うためか自分を救うためか、少年は葛藤を重ねながら復讐を決意する。このとき少年を指導してくれる先生と出会い、助言を施される。そして、復讐を敢行する。
すべての行為は自分自身のため、人が亡くなって泣くのも自分の近くにその人がいなくなったから泣いている、というのを見て、たぶん実際そうなんだろうと感じた。もちろん復讐も、自分のため。
人のために悲しむことってあるだろうけど、それが本当に人のためなのかな、世の中では大義名分を掲げてなにかをする人がいるし、自分も世の中の役に立ちたいと感じて、その仕事に就いているし。それは結局自分のためってなんとなーくはわかっていたけど、ちょっとは人の役に立ちたい気持ちがあるのかと思っていた。でもそれは、役に立って、存在意義を認められることに自分の中では意味があることなんだなと、それだけなんだなと思った。まあ、やらない善よりやる偽善ですね。
同著者の冷たい校舎の時は止まるを見てみたいと思った。伊坂幸太郎に続いて、お気に入り作家の1人かもしれない。
55.サブマリン 伊坂幸太郎
文庫版はもうないので単行本に。書店に置いてあったので、即買い。ちなみに本を買うのはamazonではなく書店派です。昨今本屋さんがどんどん潰れていって、悲しいですね。なんかの調査によると、出版不況と言われている状況はネットの普及でどこでも情報が得られるので、雑誌の売り上げが落ちこんでいるだけらしいです。文学作品の売り上げはほとんど変わってないそうです。いつの時代も一定のニーズがあるわけですね。若者の活字離れ、などと言われていますが。笑
さて、今作サブマリンはチルドレンの続き。まず驚いたのは、単行本の豪華さ。なんか表紙ざらざらだし、字はなんかかわいいし。
陣内と武藤の視点で話は進む。
小学生のころに友達がひかれて亡くなったが、20になる前、無免許運転で人を殺めてしまった棚岡くん。
脅迫状を送ったことのある人に脅迫状を送り、保護観察中の小山田くん。
棚岡くんの友達を轢き殺してしまった、若林青年。
棚岡くん、小山田くんの事件とその経過を軸に話は進んでいく。その中で、陣内たちは珍事件に巻き込まれながら話は進んでいく。
少々ネタバレになるが、話でいちばんの盛り上がり?は小山田くんが棚岡くんの轢き殺した人間は脅迫文から犯罪を起こす確率のとても高い人であったところだろう。
悪人を轢き殺して罪は和らぐのか、犬を庇ったら刑は軽くなるのか。
轢き殺してしまった張本人(若林青年)の数年経ってからもなお続く葛藤とともに語られる。
実際に轢き殺された人間が生きていたらどうなっていたかなんてたらればの話。その事実を伝えるかどうかも武藤は迷う。人の罪は何で決まるんやろな、わからんけど社会ていう規範があるからとりあえずそれに従うしかないで、その中ででも救われることはあるで。というのがこの物語だと思う。10年越しに届けられた漫画の続編、しっかり書かれていたわけではないけれど若林青年の就職、罪はどうしようもないけどその中にも救いはあるよという、ハッピーではないけどアンハッピーでもない、話でした。実際の世の中でも一概に幸せ不幸せと言い切れることがほとんどないことを伝えたいのかなあと思いました。