読書の日記

読書の備忘録です。いろんな本を読みます。ぼちぼちやるので見ていってください。

60.美しい星 三島由紀夫

60.美しい星 三島由紀夫

 

読むのにすごく時間がかかった。文化や言葉に私の持ち得る知識と相当な差があったからだ。いちいち立ち止まっていたら、読むことが億劫になって違う本を読み始めた。最近になって、映画化するとわかった。映像は想像の余地が狭められるので、そっちに逃げようかと思った。けれど、なんとなく、やめた。

 

難しい言葉だらけではあったが、読んでみると内容自体はなんとなくわかった。そして、自分の中で明らかに世の中に思うことが生まれた。また、自分に対して思うことも。一過性のものかも知れないけれど、そういう自分の中で考える時間が様々な本を読んで、積み重なってやっと一個の人を形成するのだと思う。もちろん本を読んでれば偉いとか、徳が高いとかは微塵も思っていない。それが行き過ぎてしまうと自我が膨れ上がり、頭でっかちの人になってしまうと最近思う。

 

本の内容にはいる。舞台は冷戦時の日本。のある家族。自分たちはそれぞれ宇宙人だという意識に目覚める。ソ連が核実験を行い、アメリカもそれに倣うのではないか。そして、その釦を人類は押してしまうと考え、大杉重一郎は地球人の恒久の平和を解く。

 

目的なしに作られるビル群、それは考えることを放棄し、享楽に身を委ねる人々の象徴だった。戦争は肉体的苦痛が、精神的苦痛が、個人の中で完結してしまうものであるからこそと考えた。そして自身もまた、個人の中でしか完結できないことを知り、己の卑小さを思い知る。ただ普通の人と違ったのは、空飛ぶ円盤と出会ったことだ。そこで重一郎は自身に人類の存続を使命として派遣された火星人であるという意識に目覚める。そして冷戦の終結こそ、フルシチョフケネディの仲が良くなることこそ地球を美しい星たらしめる、と考える。

 

もう一つの宇宙人団体が登場する。大学助教授の羽黒たち3人である。彼らは白鳥座六十一番星あたりから来たらしい。彼らの目的は、地球を滅ぼすこと。こちらはみな、社会に対して黒い感情を持っていて、いうことやることが自分を満たすためっぽくて嫌い。劣等感を持ち続け、他人を気にしすぎた結果芽生えた自我が自分と自分の近しいもの以外への憎悪。しかも自分らは宇宙人であり、地球人を滅ぼすのが使命だという大義名分?を得る。こちらは彼らの個人的な恨みを膨れあがらせた状態。彼らが憎む人を殺すために人類を滅ぼすという目的を掲げているように感じる。小さい目的のために大きい目標を掲げる?のようなイメージ。見ていて気持ちのいいものではない。

彼ら?というか羽黒は人類の滅亡のプランを人間の事物に対する関心だと述べる。個人の偶然が重なり、自分たちが直接手を下さずとも偶発的に水爆、原爆の釦は押されるだろう、と。

 

そして、大杉重一郎と羽黒ら三人は対峙する。羽黒以外の二人はただの人間的な欲を自身は宇宙人であるという大義名分とともに晴らそうとしているのがここでもわかる。大杉と羽黒は人類の在るべき形を論じ合う。

 

羽黒は人は事物への関心、人間への関心、神への関心があり彼らが在る限りは人間は平和にはなれない。物としての人はあまり役に立たず、死んでしまえば全く役に立たなくなる。人は物によって幸福の外観をもたらす。そして物の究極に人間的な物が水爆であるという。

 

それは孤独で、英雄的で、巨大で、底知れぬ腕力をもち、最もモダンで知的で、簡素な唯一つの目的(すなわち破壊)をしか持たず、しかも刻々の現在だけに生き、過去にも未来にも属さず、一等重要なことは、花火のように美しくはかない。これ以上理想的な『人間』の幻影は、一寸見つかりそうもない。

本書p264l9〜

 

また人は自分だけは違う、もしくは自分と同じじゃないかということを確認するために人を探す。また、人類共有の老いも病気も死も存在しない。自分は想像力を持たないでもよいが、専ら他人の想像力に愬える。

 

人が平和を決して掴むことができない理由がある気がした。上記はとても印象に残ったところを抜粋、思い出して書いている。そのほかにもたくさん、考えなければならないところがある。人の本質を考え、書きながら一つのストーリーになっていく。

 

 

彼の生まれた時はごりごりの尊皇論、敗戦後は徹底的に平和を訴えるという時代の境目だった。その中で新聞ラジオの媒体によって意識のころころ変わる日本人に疑問を感じていた、という話を聞いたことがある。 

しっかりとした目的意識、目標を持って生きていない人々に彼が訴えたかったことを本を通して知っていきたいと感じた。

 

58.59.冷たい校舎の時は止まる(上)(下) 辻村深月

58.59.冷たい校舎の時は止まる(上)(下) 辻村深月

 

今読み進めている本が、やや古典で読みづらく全然進まないのでなんかないかと書店をふらついていた。line漫画で無料で一巻でていたり、友人に紹介されたりとなかなか興味はあったので太さに怯まず、買った。計1200ページ強は今までで最長。

 

今まで読んだ辻村作品(4〜5冊だけど)の中ではダントツの出来ではないかと感じました。

散りばめられた伏線、綺麗な伏線回収、程よい?ホラー、謎、謎、謎。

 

自殺した友人を思い出すために集められた仲良し8人。彼らのバックグラウンドから犯人=自殺した人を推理しながら読み進めました。各々引け目を感じる出来事や、周りとの差に葛藤を抱えながら生きている。8人全員がしっかり描かれていて、その都度その都度考えさせられることがあった。ただ、ホラー要素が強すぎてリカちゃんと昭彦のあたりは怖くて怖くて仕方なかった。

 

実は、読み進めるうちに現実世界に戻って行く子たちの言動やらから自殺者が誰なのかは当たっていました。嬉しい。

 

ネタバレとともに書いてしまうが、辻村深月の世界で、榊は中立だった、ということが刷り込まれているが実際は違かった。自殺した春子への仕打ちが、直接ではないにしろどのようなものだったか、書かれずに終わる。仕方ない、とは思うけれど榊くんが殺してしまったと言っても全然おかしくはないものだった。死人に口なし、どんな気持ちだったかもわからない。

 

菅原→榊の伏線の張りっぷりは凄まじいですね。見落としているところもあるはずだから、1週目のストーリーを念頭に置いてまた読むこともお勧めできる。

 

悲しいし、すっきりし尽くして終わり、っていう話ではないのだけれど記憶に残るいい話でした。

 

 

 

56.悲しみのイレーヌ 57.盲目的な恋と友情

56.悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル

 

その女アレックスに続いて、読んでみた。

詳しく書くとネタバレしてしまいそうなので色々割愛。

あまり、がっつりミステリーは読まないので衝撃がすごかった。グロ表現が多分にあって、読み進めるのがきついです。ただ、アレックス同様とてもハラハラし続けるいい小説でした。

 

57.盲目的な恋と友情 辻村深月

 

新潮社から出版されている数少ない辻村作品。

もうタイトルのまんまでしたね。

友達やら恋人やらのバランスには気をつけたほうがいいていう話でしたね。

親友が一人で友達があまりいないとああなるよ、恋人がある時期までいないとああなるよてな感じで嵌りやすい、初々しさを書いてたのかなと。友人の話も恋人の話もなんとなく言いたいことはわかると思えてしまったので、盲目的にならないように気をつけたい。モテてると思われる男がモテるって聞いたことがあるけど、割と当たってると思うので、固執するのもほどほどにとも思いますね。

 

54.ぼくのメジャースプーン 55.サブマリン

54.ぼくのメジャースプーン 辻村深月

 

凍りのくじらが面白かったから、2作目。

小学生の話し口調で話は進む。小学生らしからぬ言葉遣いや難しい漢字を平仮名にすることで小学生っぽさを出してるんだけど、ちょっと違和感があった。その小学生の思っていることをしっかりと言語化したらこういう感じになる、ていうのを文章にしてるのかなと解釈して、慣れた。

 

内容的にも、うさぎを惨殺されて心を閉ざしてしまう女の子もまあ小学生でないと話が綺麗に流れないだろうし、伝えたい部分はそこではないから些末なことなのかなと。

 

女の子を救うためか自分を救うためか、少年は葛藤を重ねながら復讐を決意する。このとき少年を指導してくれる先生と出会い、助言を施される。そして、復讐を敢行する。

 

すべての行為は自分自身のため、人が亡くなって泣くのも自分の近くにその人がいなくなったから泣いている、というのを見て、たぶん実際そうなんだろうと感じた。もちろん復讐も、自分のため。

 

人のために悲しむことってあるだろうけど、それが本当に人のためなのかな、世の中では大義名分を掲げてなにかをする人がいるし、自分も世の中の役に立ちたいと感じて、その仕事に就いているし。それは結局自分のためってなんとなーくはわかっていたけど、ちょっとは人の役に立ちたい気持ちがあるのかと思っていた。でもそれは、役に立って、存在意義を認められることに自分の中では意味があることなんだなと、それだけなんだなと思った。まあ、やらない善よりやる偽善ですね。

 

同著者の冷たい校舎の時は止まるを見てみたいと思った。伊坂幸太郎に続いて、お気に入り作家の1人かもしれない。

 

 

 

55.サブマリン 伊坂幸太郎 

 

文庫版はもうないので単行本に。書店に置いてあったので、即買い。ちなみに本を買うのはamazonではなく書店派です。昨今本屋さんがどんどん潰れていって、悲しいですね。なんかの調査によると、出版不況と言われている状況はネットの普及でどこでも情報が得られるので、雑誌の売り上げが落ちこんでいるだけらしいです。文学作品の売り上げはほとんど変わってないそうです。いつの時代も一定のニーズがあるわけですね。若者の活字離れ、などと言われていますが。笑

 

さて、今作サブマリンはチルドレンの続き。まず驚いたのは、単行本の豪華さ。なんか表紙ざらざらだし、字はなんかかわいいし。

 

陣内と武藤の視点で話は進む。

小学生のころに友達がひかれて亡くなったが、20になる前、無免許運転で人を殺めてしまった棚岡くん。

脅迫状を送ったことのある人に脅迫状を送り、保護観察中の小山田くん。

棚岡くんの友達を轢き殺してしまった、若林青年。

 

棚岡くん、小山田くんの事件とその経過を軸に話は進んでいく。その中で、陣内たちは珍事件に巻き込まれながら話は進んでいく。

 

少々ネタバレになるが、話でいちばんの盛り上がり?は小山田くんが棚岡くんの轢き殺した人間は脅迫文から犯罪を起こす確率のとても高い人であったところだろう。

悪人を轢き殺して罪は和らぐのか、犬を庇ったら刑は軽くなるのか。

轢き殺してしまった張本人(若林青年)の数年経ってからもなお続く葛藤とともに語られる。

実際に轢き殺された人間が生きていたらどうなっていたかなんてたらればの話。その事実を伝えるかどうかも武藤は迷う。人の罪は何で決まるんやろな、わからんけど社会ていう規範があるからとりあえずそれに従うしかないで、その中ででも救われることはあるで。というのがこの物語だと思う。10年越しに届けられた漫画の続編、しっかり書かれていたわけではないけれど若林青年の就職、罪はどうしようもないけどその中にも救いはあるよという、ハッピーではないけどアンハッピーでもない、話でした。実際の世の中でも一概に幸せ不幸せと言い切れることがほとんどないことを伝えたいのかなあと思いました。

 

 

53.その女アレックス ピエール・ルメートル

53.その女アレックス ピエール・ルメートル

 

友達に勧められて読みました。やっぱり和訳された本ってちょっと読みづらいというか見慣れない言い回しが多いかな、という感じ。

 

アレックスはヴェルーヴェン警部シリーズの2作目ということで、、、。はやくイレーヌが見たい。しかし、若干ネタばれを食らっている状態。まあ読むけど。

 

さて、順序を間違えて読んでしまった訳ですがその女アレックスどうだったかというと、なかなか内容がきついです。グロ耐性があまりないため、すすすって読んだところがありました。

 

1部2部がヴェルーヴェン警部たちも読者もよくわからないまま(アレックスの行動も見える分、事件の理解は読者の方が高い)進む。3部は解決編のようなもので、事件の理解は警部らの方が高く、どんどん彼らが真相を暴いていくのを理解する、といった感じでした。

 

3部は特に読むのがきつかった。これアレックスだけの問題ちゃうやんな〜て思いながら読み進めました。

 

ヴェルーヴェン、アルマン、ルイ、ジャンら警官たちの気を遣いあった会話や彼らの欠点はどこにでもありそうなところ(本の主人公たち一行でこんなあんまりよくない性格の方をおしだしているの初めて見た)、自分たちの正義を貫く(それが世間的な正義かどうかは問わない)ところは綺麗にまとまってる綺麗ごとのお話しとは違うなと思った。

綺麗にまとまってるって、とても有能ないいチーム、みんないい性格、気なんか使わなくても心が通じてる感、みたいないいところしかなくて、悪を倒すよ!みたいな。まんまこんな話はないだろうけど、なんかそんな感じのあるよね。

 

 

悲しみのイレーヌ、はやく読んでみたいですね。

 

50.51.怒り(上)(下) 52.フィッシュストーリー

50.51.怒り(上)(下)  吉田修一

 

映画を見てからの、文庫本。

映画の印象は市川で起きた市橋達也の事件に似ているな、というもの。キャストが塩系?の顔だし、最後の頬を削ろうとする場面とか、事件の唇のオマージュだろうと考えられる。

 

見終わってから調べてみると、なんかの特集で吉田修一のインタビューで市橋達也の事件を意識していると書いてあった。その時の潜伏先の人々との関係を書きたかったらしい。詳しく書くと、身元不明の男を信用していいのか、自分の見たものと指名手配の顔が似ているという状況での周りの人の心境の変化、わがたまりを表現したかったらしい。

 

映画を見た時はおお〜確かに!!確かにそーだった!!でもミスリードで引っ張りすぎなんかな〜とも思った。まあミステリーというよりは人間ドラマ?の方を書きたいのだからしょうがないといえばしょうがない。全体を通して満足度の高い映画だった。その前に見た「何者」が微妙だったから、というのもあるかもしれない。

 

映画が長くてよかっただけあって本も読んでみたくなり、半年ほど経って買った。

 

警察のところが詳しく書かれていたのとほんとちょこちょこずつそれぞれのエピソードが追加されているくらいであまり映画と変わらなかった。あとクライマックスは映画の方が映像映えする、といったくらい。

 

内容に関しても、東京では言うに言えない事情を抱えていてそれを言っては全てが崩れてしまうと相手を信じきれなかった男、そのことに違和感を感じて信じきれない男、両方とも辛かった。千葉でも面倒見の良い男を家族単位で信用できなく、結局警察に通報してしまう。警察にばれると危ない組織にもばれると言っていた男の頼みを信じきれなくて。

 

上下あったが、内容が分かっているだけに、2日で読めた。内容が怖いし、ずっしりくるけど悪人も読んでみたい。

 

52.フィッシュストーリー 伊坂幸太郎

 

文庫化されている伊坂幸太郎の最後の本!

どうしても動物のエンジンが面白いと感じられなくて(冒頭)読み進められないし、次々買ってきてしまって結局最後になった。

 

サクリファイスは政治家批判ともとれる内容。黒澤さんがこんな頻繁に出てきて嬉しい。フィッシュストーリーも一曲が世界を救ういい話だった。この風が吹けば桶屋が儲かるみたいなのはとっても好き。ポテチは初めて結末がわかった話で嬉しかった。ポテチを間違えた大西がこっちの味も案外いいってその言葉で救われた今村がすっきりできて?よかった。

 

とりあえず、

キャプテンサンダーボルト

火星に住むつもりかい?

サブマリン

アイネクライネナハトムジーク

のでかい本も買ってしまおうかな。それかチルドレンやグラスホッパーあたりを読み返そうか悩み中。

 

忙しいものことの合間に本を読むととっても進む。最近とても読めていて楽しい。今度は3652に出てくる伊坂さんの読んだ本をひとしきり読んでみようかな、なんてことは、ない。

 

48.ラッシュライフ 49.重力ピエロ

48.ラッシュライフ 伊坂幸太郎

 

何度も下書きが消えて、書きあぐねていた。

 

いろんな過去から未来から話が繋がっていて、チルドレンを思い出す。言い回しや軽快なテンポの会話はそのままで飽きることなく、読了。

 

発行的には初期の段階で、首折り男に出てきた黒澤が印象的だった。高橋をめぐる話、無職のおじいさんの話はとても好きだった。じわじわと時系列がわかるなか、最後の外国人の彼女の「好きな日本語」のアンケートによってしっかりとスッキリでき、何度でも読み返して、時系列順にそのまま読んでも面白いかもしれないなと思った。首折り男の黒澤の話は時系列がまるまるばらばらで、ケツから読むお話で何度か見返す面白さがあった。

 

49.重力ピエロ 伊坂幸太郎

 

終末のフールに続く2度目の既視感のあった小説。いつどのタイミングで読んだかわからないが、読めば読むほど記憶が溢れ出てくるといった感じで、思い出しながら読んだ。

 

ガソリン生活やオー!ファーザーよりも取り扱う内容は重いが、家族のあり方が一つのテーマにあると思える作品。2回目でもすごく楽しく読めた。

 

アヒルと鴨のコインロッカーのドルジや今作の春や泉水の自分の中の善悪の判断をしっかりもっていることは、世間一般では悪と判断されることでも自分の信念を持ってやり抜く。説得し通す。そういう姿勢が見ていて気持ちいいと思えるところなのかと感じた。