読書の日記

読書の備忘録です。いろんな本を読みます。ぼちぼちやるので見ていってください。

26.〜36.伊坂幸太郎 一口感想

26.死神の精度 

短編集。実は浮力を先に読んでしまっている。一つの視点から見ればクレーマーとオペレーター、もう一方では敏腕ディレクターと魅力的な声の女。こんなことができるの伊坂さんしかいないんじゃないの?っておもうものやベタなものまで。いろいろ入ってます。

 

27.死神の浮力

こちらは短編集ではない。娘を殺された復讐に燃える家族と死神の千葉さん、サイコパスと犯罪グループを描く。読み応えがあった。久々に読書するきっかけになった本のうちの一つ。現実的な場面と非現実的な死神をいれるこの手法はSOSの猿やバイバイ、ブラックバードにもみられる。あと、オーデュボンの祈りもか。バランスの具合が心地よく、はまっていった。

 

28.残り全部バケーション

短編とも言える、つながりの強い物語。オチを書いてしまうと、危ない仕事を抜けたがっていた、あいつは甘いものにはまり、人気ブロガーになっていた!タキオン作戦や他にも面白い、なんとかなりそうな作戦や行動。ページ数は少ないが読後感が最高に良かったのを覚えている。

 

29.PK

これは12月に入ってから読んだもの。

よくわからないがすごい組織。それよりももっとすごい組織。それらが変えていく世界での影響を受けた人たちの話。

 

30.首折り男のための協奏曲

11月28日に文庫化されたもの!即アマゾンで購入。作品同士のつながりがなかった?作品。首折り男よりも僕の舟、月曜日から逃げろが面白かった。

合コンの話は奥谷奥谷がでたり、お前がピアニストだったんかい!!という感じで楽しかった。色々なジャンルの話が詰まった本。

 

31.オーデュボンの祈り

鎖国された国、未来予知のできるカカシが殺された!、この国には足りないものがある、色々な疑問が、ユーモラスなキャラクターたちによって明かされていく。ものすごく好きなお話。

 

32.夜の国のクーパー

猫が喋る国、クーパーとはなんなのか。猫視点で話が進んでいく。僕はどう鉄の国から夜の国を守るのか。

最後はガリバー旅行記みたいでした。

 

33.ガソリン生活

伊坂再読のきっかけの本のうちの一つ。

車たちの視点で物語は進む。車のなか以外の声は聞こえなく、なんとももどかしい気持ちになりながらページを捲る捲る。フランク・ザッパ好きな車や、話のわからない自転車、カーズを思い浮かべてしまうけれど、楽しい話だった。オー!ファーザーの家族が出てきていたのを知ったのはつい最近。

 

34.グラスホッパー

妻を殺された鈴木がどんどんとおかしな殺し屋世界に巻き込まれていく。場面がコロコロ変わるのに、ストーリーがわかりづらくない、どんどんと紐解けていく。そんなストーリー。

 

35.SOSの猿

現実離れしたものと、リアルな生活をごっちゃにするのが本当にうまいなあ、と感じた作品。下のアヒルと鴨もなかなかごっちゃがうまいが、SOSの猿の方が現実離れしすぎてるものが平然とそこにいるのがいい。

 

36.アヒルと鴨のコインロッカー

文化人を名乗る友達に勧められて読んだ本。完成度高すぎないか。ドルジがとても好きだ。河崎がとても好きだ。導入から引き込むのがうまい。伊坂作品の代表作でいいと思う。他の著者の本を見ると導入が引き込まれないものが割とあるのに対して、伊坂作品はほとんどない!映画も3ヶ月以内には見たい。

 

37.魔王

世界を変えたいと願った兄と弟の話。

特殊能力に目覚めたが犬養の演説中、道半ばで死んでしまった安藤。なにかを変えようとする心を兄同様持っている弟の潤也。最後の鳥視点はとてもよく覚えている。モダンタイムスが魔王の50年後の世界だというので読みたいが、上下巻あり、太くてなかなか手が出しづらい。

24.オー!ファーザー25.ジャイロスコープ

24.オー!ファーザー 伊坂幸太郎

伊坂作品の中でも上位に入る!!

他の著者の本を読むようになってわかったが、ここまで冒頭から引き込まれるのは伊坂幸太郎さんだけだ。

お父さんが4人いるってなに!!面白そうすぎる。なんか事件に巻き込まれての救出劇、意外な伏線、解決譚は陽気なギャングシリーズに似てるなと思った。言葉選び話の進行全部が好きなんだよなあ、て感じ。鷹の言う学校で反抗する奴なんてのは、安全が守られた中でのスリルを味わっているだけだ、とか頭の中で反芻される感じ!ずーっと読んでいられる。

 

25.ジャイロスコープ 伊坂幸太郎

浜田青年ホントスカのせいでほんとっすか?が口癖になりそう。しかも浜田青年はもうこの世にいないなんて。違う雑誌に載っていた短編たちが集まるのはいいと思ったが無理にしなくても、とも思った。面白かったけど。

if はスッキリ爽快、ifであってifでない!題名に騙された〜って感じですね。ただ自分が先入観バリバリで見ていただけなんだけど。

スッキリまとまっていたりまとまっていなかったり、満足感◎の作品。

 

22.フォルトゥナの瞳 23.悪意の手記

22.フォルトゥナの瞳 百田尚樹

描写が細かいとは聞いていたけど、背表紙の内容に入るまで100ページ近く使うのは驚いた。

ただそれを読み終えてからは速かった。偉そうだけれども、さすが有名なだけあるなという感じ。話自体も面白いし、出てくる医者やパティシエについてもいろいろ考えることがあった。交通事故で亡くなる、未発見の病気で亡くなる、世の中にはいろいろな死に方があってそれがいつ起こるかわからないことへの漠然とした不安が残った。ただ他への奉仕と自己の幸福はどこまでが許容される範囲なんだろう、と考えると、自分1人しか地球上に残らない位にならないと死と引き換えの他への奉仕は考えられないかなと思う、醜い?自分もいた。

 

23.悪意の手記 中村文則

こちらもこちらで、、、。

中村文則作品二作目だ。

二作続けて殺人系だった。苦しみに明け暮れた主人公が世の中に対し何を思っていくのか、

三島由紀夫の命売ります的な感じなのかなあ。

人を殺しても幸せになれるのか、食材は可能なのか。ただ法律で罰されれば償いになるとは思えない。もし、を考えたら復讐するくらいになると思う。k君の親と主人公、主人公が狙っていた20歳の男と、Jさんの親。彼らは同じ関係にあったにもかかわらず、なぜ主人公は失敗したのか。意識の中の無意識が自分の生を望んだ。題材は重いし、気分も重くなるし、ヘビーだった。

 

 

 

 

 

21.ストーリー・セラー 22.バイバイ、ブラックバード

21.ストーリー・セラー 有川浩

sideA 小説内の小説家が書いた小説の中の小説家が書いた小説に惚れた男の話。

sideB 小説内の小説家が前作を受けて対に

なる物語を現実の逆夢にしてしまうために書いた小説。

 

sideAを見たとき、主人公の犯罪者感くっさい台詞にびっくりした。安っぽいドラマ(見たことないけれど)を見ているようだった。またsideAのヒロインの家族や周りの人がどうしようもなさすぎて(特に父)流石にこんなやつおらんやろ、と思ってあまり物語にのめり込めなかった。小説だったことも、ん?この半分なんだったん?と思ってしまった。

sideBは割と好きだった。小説家とその小説家の本が好きな彼氏という構図が変わらずに死に至るのは逆、というのは面白いと思った。最後の終わり方も良かった(多分まだ生きている?)。でも彼女、小説で書いたsideBのような出会いをし、彼氏と結婚している。sideAと同じような出会いと言ってもいい。ということは救われないのではないか、と思った。

 

この作品、見開き1ページ全部好きだ、とか覆す、とかの単語で埋まっていることがあってあまり好みではない。怨念系。

 

 

 

22.バイバイ・ブラックバード 伊坂幸太郎

 

ショートストーリーなのだが、6編全てが彼が女性と別れる、別れようとする話で、そんなに色々差をつけて書けるのかなと思った。

 

全くの杞憂だった。

イチゴ狩りで出会った女性

刑事に車を持ってかれたときに、出会った女性

怪盗になりたい女性

乳がんかもしれない女性

女優

繭美

彼女たちとはそれぞれに確固たるストーリーがあった。

イチゴ狩りで出会った女性の話に出てきた、大盛りラーメンを食べられなければ別れる、というもの、話の軽快さもあり没入してしまった。特にイケメンという訳でもない主人公、明らかに現実離れした肉体の繭美、そしてどこにでもいそうな彼女。この話から始まったから、普通の女の子から始まったから、するする読めたのかもしれない。

繭美はどんどん変わっていき、最終的には主人公を助けようとする。提案をする。彼の不思議な魅力に惹きつけられた女性のうちの1人だということだろうか。

 

ロングインタビューを見てみたら太宰治の未完のグッド・バイのオマージュだとあった。また笑いの根底には死があるというは伊坂作品共通して言えることではないかと感じた。

19.学問の技法 20.去年の冬、きみと別れ

19.学問の技法 橋本努

とある先生に勧められて、本日読了。一言で言うと、大学生活何をしていいかわからずモヤモヤしている大学生はこれを読もう!だ。

 

まだ何もしていない学生達にわかるように、学問と勉強の違い、読書のすすめについて書いてある。著者が大学教授であるからか、レポートや卒論、ディスカッションなどについても書いてある。様々な人と触れる機会の多くなる学生にはどの章でもいいのでみたいなと思ったところだけでも見てもらいたい。

 

借り物だけに、付箋など貼れないのが大変惜しい。Amazonで注文することを決めた。自分が何かに躓いたとき、何をしたらいいかわからないとき、そんなときにこの本を読み返したい。

 

 

20.去年の冬、きみと別れ 中村文則

 

著者の作品は「教団X」が有名であるが、背表紙を見たときびびっときたので、即購入した。

 

 ページ数も180ページちょっとと短く読みなれている人は3時間くらいで読み終えられてしまう分量だったので一気読みをしてしまった。

 

最初は小説家、僕と雪絵が別れることを仄めかす場面もあり、それが題名なのかと思っていた。いい意味で裏切られた。帯には、この事件は根底から2度覆る。とあった。K2の人形師の推測やその人形たちに、朱里さんに、騙された。最後はん??と思ったが仮名なのだから木原坂という名前は仮名だし、僕も名前が出ていないので、その彼らの本名があのイニシャル、という解釈で間違っていないだろうか。もう一度読んでみようと思える作品だった。

 

ミステリーはあまり読まずにいたので、これからどんどん有名どころの東野圭吾など読んでいこうと思う。

 

16.〜18陽気なギャングシリーズ 伊坂幸太郎

16.陽気なギャングは地球を回す

17.陽気なギャングの日常と襲撃

18.陽気なギャングは三つ数えろ

 

最初の作品を見たのは中学生だった。私の感性があの頃と変わらないのは、中身が成長していないからか、伊坂幸太郎の書くものは年代問わずうけるのか、どちらかだ。後者でありたい。

 

久遠、響野、成瀬、雪子彼らの相変わらずの軽快な会話、知的好奇心をくすぐる会話、伏線回収のための会話。その全てがページをめくるための『会話』になっている。どんどんどんどんページをめくってしまうこの独特のストーリーの進み方は伊坂幸太郎だけのものだろうと思う。

 

日常と襲撃での人気演出家の奥谷奥谷は首折り男のための協奏曲の合コンの話にちょろっとでていたり、普段から悪いことしているやつはたまにいいことしたくなるんだ、とかの台詞回しは他の作品に出てくる。ネタがないから、などとも言われそうだが、それぞれ個人がすらっと言う。違和感はない。人もいろんな作品の親戚だったり、とか言われているがそこまでは気にして見ていない。

 

マリアビートルでも書いたが、彼らは犯罪者である。決して善良な市民が人助けをするお話ではない。陽気なギャングは三つ数えろでも悪い記者をやっつけるために違法カジノのディーラーのおばあちゃんの形見の亀を殺したかのようにするし、悪い記者のその後はわからない。しかし、読んですっきりなのはなぜだろう。彼らは銀行強盗だ。本書の言葉を引用するなら気を隠すなら森の中。失敗を隠すなら大失敗の中。悪党を隠すならより巨大な悪党。といったところか。笑

三作目にして彼らは強盗稼業の引退をほのめかしているが、頑張ってほしい。時が経っても変わらずに軽妙な会話をしてほしい。

 

次回?というか9月から読んだ本がまだ書いていないのが10作品くらいあって、最近は本読むペースも早くなってきて、溜まる一方なので思い入れのある伊坂作品達もどんどん書いていきます。

 

 

 

15.だから荒野 桐野夏生

最初の印象は、うわっなにこれ。読みたくないな。だった。しかし結局2日で読んでしまった。

 

 

まず、冒頭50ページ程で家族崩壊というものがまざまざと見せつけられた。みんな自分勝手で、この家族の男たちは見てるものを不快にするなあという印象を持った。しかし、母の方にも決して悪いことがないわけではなく、自分の家は家族仲が良い方なのでわからないが、ここまでとはいかなくともその辺にあるかもしれない家庭の状況なのかなと思う。

 

話は進み父目線と母目線で話は進んでいく。父パートでは父方の自分勝手さ、周りはひいているのに気づかなく自己正当化するところが様々な場面から伺える。母が消えたことによる『家庭の崩壊』を感じることができないまま家庭は崩壊する。崩壊するまで自分は合ってる、お前らは社会に通用しないを唱え続けた父は最後まで変わらないでいるものの、円満に終わるのかな、といった感じで進む。

 

母パートではお金遣いが荒く、この人本当に逃げ続けられるのかな、と若干呆れる。拾い拾われの定まらない状況変化、ドライブ中に会う人たちはそれぞれが細かく書かれていて面白かった。ただ途中から母は合理的だったという評価を息子たちからされていたことにはびっくり。野菜食べないから野菜ジュースにするって合理的なのか?と思う。猛々しさも、最初見た限りでは全く感じなかったけれど、確かに1人でとりあえず長崎に行くという決断は猛々しいのかとなんとか飲み込んだ。

 

最後には家に戻ってくるとなって、解決したかに見えるが息子への不安は拭いきれない。父もまた然り。だから荒野、とは行く先のない先行きのわからないところへ旅するから荒野だと思っていたが、自分の住んでいる環境全てを指して荒野、と言っているのはなるほど!といった感じにすっきりとした。

 

最後に、これはレッテル貼りの好きな現代への風刺みたいなものなのかなとも感じる。父の話が止まらないのも自分でそう思っているからこそ、喋らなくてはという感じだったし、いざという時は言葉を失ったりとブレブレだった。また母の合理的、猛々しさというのは言われないとあー、なるほどとはならない(これは自分だけかもしれないが)。また次男も決めつけられていたが新たな一面を垣間見ることによって、母の決意は揺らぐ。レッテルを貼ることによりできなくなること(次男への諦め)人の不確かさ、時間、環境からの影響など人のリアルも書けていると感じた。